真空ポンプは種類が多いため、どれを選べばいいのかわからない人もいるでしょう。
真空ポンプは、どのくらいの圧力で真空状態にしたいのか、どの業界の研究や開発に使うのか、といった条件を明確にしたのちに使うべきものを選ぶ必要があります。
そこで、最適な真空ポンプを選ぶために、研究や開発を行う業界ごとの用途に応じた真空ポンプの種類について解説します。
真空ポンプとは
真空ポンプとは、空間を大気圧以下の真空状態にする装置です。大気圧よりも低気圧にするため、空間の空気を外へ送り出し一定の気圧を維持します。
真空ポンプを使う身近な例として、食品の包装や乾燥があります。真空にすれば、酸素濃度が低い状態を維持できるため、食べ物の酸化を防ぎ、長期保存が可能です。
加えて、食べ物を凍らせて真空の空間に置くと水分を抜き取れるため、品質や味を損なうことがありません。熱を加えると劣化しやすい食材でも簡単に乾燥させる技術にも真空ポンプが利用されます。
また、半導体製造でも真空ポンプは利用されるものの、食品の包装よりも空間の空気をより外へ排出し低気圧下で扱わなければなりません。
そこで、真空状態を区分するため、真空は気圧の違いにより次の5段階に分類されます。
- 低真空
- 中真空
- 高真空
- 超高真空
- 極高真空
超高真空に近づくほど、高性能な真空ポンプが必要です。そのため、真空の状態に合う真空ポンプを選択しなければ、目的の真空状態を実現できません。
真空ポンプの種類
ここからは、真空ポンプの種類を5つにまとめて解説します。
油回転真空ポンプ

油回転真空ポンプは低真空~高真空を実現する際に使用する真空ポンプであり、食品や医療分野で利用されることが数多くあります。
油回転真空ポンプの特徴は耐久性に優れ、比較的長期的に使用できることです。加えて、油回転真空ポンプの排気口にオイルミストトラップをつけると、運転中や使用後に出るオイルを除去できるため、メンテナンスが容易になります。
また、油回転ポンプは構造の違いにより、揺動ピストン型と回転翼型があることを念頭におくことが賢明です。
ドライ真空ポンプ

ドライ真空ポンプは、主に低真空を実現する際に使用されて、医療機器・フィルム吸着・理化学分析機器に利用されます。
油や液体を使用せずに空間から空気を外へ排出できることから、きれいな真空状態を作れるため、さまざまな分野で使用されており、用途が多いことでも有名です。
加えて、ドライ真空ポンプにはダイヤフラム型やスクロール型、ルーツ型などさまざまな構造のものがあることも覚えておきましょう。
メカニカルブースターポンプ

メカニカルブースターポンプは、主に中真空を実現する時に使用されて、脱ガスや真空乾燥などの用途で利用されます。
メカニカルブースターポンプの特徴は、排気性能に優れて長寿命であることです。操作や保守が容易であるうえに低振動であるため、利用しやすい真空ポンプです。
油拡散ポンプ

油拡散ポンプは、主に高真空を実現する際に使用され、半導体製造装置や殺菌・乾燥・脱水などの用途で利用されます。
油拡散ポンプの特徴は排気速度が大きく、ヒーターの寿命が長いことです。
また、構造の違いにより、標準型とサイドエゼクタ型があります。
ターボ分子ポンプ

ターボ分子ポンプは、主に高真空を実現する際に使用し、半導体製造装置や分析装置に利用されます。
ターボ分子ポンプの特徴は排気速度が一定であり、連続した排気ができることです。ただし、ターボ分子ポンプは中真空程度まで真空状態にしてから使用する必要があるため、油回転ポンプやドライ真空ポンプと併用しなければならないことを念頭におきましょう。
真空ポンプを製造するおすすめ企業3選
最後に、真空ポンプを製造するおすすめ企業を3つ紹介します。
神港精機株式会社

項目 | 詳細 |
---|---|
会社名 | 神港精機株式会社 |
会社住所 | 兵庫県神戸市西区高塚台3丁目1番35号 |
創業年数 | 昭和24年 |
公式サイト | https://www.shinko-seiki.com/ |
神港精機株式会社は、ドライポンプ製造分野で国内トップシェアを誇るメーカーです。
創業以来、真空装置の専門メーカーとして培ってきた技術力と、顧客ニーズに応える製品開発力により、確固たる地位を築いています。
近年は、グローバル展開の一環としてインド市場への参入を強化し、さらなる技術革新と市場拡大を目指しています。また、持続可能な社会の実現に向けて、環境負荷を低減する新世代の真空技術開発にも積極的に取り組んでいます。
同社のドライポンプは、優れた性能と高い信頼性に加え、環境配慮型設計を特徴としており、半導体や電機、化学など幅広い産業分野で高い評価を得ています。IoTやAIの進展に伴い、真空技術の需要は今後さらに拡大すると予測されています。
神港精機は創業以来、ドライポンプの販売数を増やしつづけているものの、次のような真空ポンプの製造・販売もしています。
- ドライ真空ポンプ
- メカニカルブースターポンプ
- 油拡散ポンプ
- 水封式真空ポンプ
- 油回転真空ポンプ
神港精機のドライポンプは高い性能と信頼性、そして環境への配慮を兼ね備えた製品です。さまざまな産業において、その高い性能が評価されており、今後もますます需要が拡大していくことが期待されます。
真空の状態や排気速度の違いによりさまざまな種類があるため、購入の際は最適な製品を問い合わせるのが賢明です。

樫山工業株式会社

項目 | 詳細 |
---|---|
会社名 | 樫山工業株式会社 |
会社住所 | 長野県佐久市根々井1-1 |
創業年数 | 昭和26年 |
公式サイト | https://www.kashiyama.com/ |
樫山工業株式会社は、国内初のドライ真空ポンプを販売した真空ポンプの製造メーカーです。
ドライ真空ポンプを主力として、次のような真空ポンプの製造・販売を行います。
- ドライ真空ポンプ
- 油回転真空ポンプ
- 水封式真空ポンプ
- メカニカルブースターポンプ
樫山工業株式会社では、公式ホームページ上でドライ真空ポンプを『用途で選ぶ』または『性能で選ぶ』といったタブ分けがされています。
しかし、製品が豊富にあるため、相談したい場合には公式ホームページの右上『問い合わせ』から必要事項を入力し送信すると、連絡がもらえます。
アルバック株式会社

項目 | 詳細 |
---|---|
会社名 | 株式会社アルバック |
会社住所 | 神奈川県茅ヶ崎市萩園2500番地 |
創業年数 | 昭和27年 |
公式サイト | https://www.ulvac.co.jp/ |
株式会社アルバックは、真空技術の潜在・顕在ニーズに応えるべく革新的・先進的な技術開発を続ける真空ポンプ製造メーカーです。
国内以外にも東アジアや欧米で製造・販売を行うネットワークを構築しています。
株式会社アルバックは真空機器の総合メーカーであり、半導体や自動車といった産業向けの製造で用いる真空装置で高いシェアを誇るものの、次のような真空ポンプを製造・販売しています。
- 油回転真空ポンプ
- ドライ真空ポンプ
- メカニカルブースターポンプ
- クライオポンプ
- ターボ分子ポンプ
- スパッタイオンポンプ
株式会社アルバックでは装置や機器に故障が起きた場合、最寄りの支店からサービスエンジニアを派遣し復旧を行う緊急対応システムがあるため、万が一の時にでも安心できます。
まとめ
真空ポンプは、目的とする真空状態に応じて最適な機種を選択する必要があります。
目的の真空状態を実現する場合には、次のような真空ポンプの利用がおすすめです。
低真空 | 油回転真空ポンプ、ドライ真空ポンプ |
中真空 | メカニカルブースターポンプ、油回転真空ポンプ |
高真空 | ターボ分子ポンプ、油回転真空ポンプ、油拡散ポンプ |
ドライ真空ポンプは、油や液体を使用しないため、きれいな状態の真空を実現できるメリットがあります。
また、油回転真空ポンプはオイルミストトラップを排気口につけると、オイルを排除できるため、メンテナンスが容易になるうえに低振動で運転するため扱いやすくなることも念頭におきましょう。