真空ポンプの騒音はどこから？原因や対策、おすすめの真空ポンプも紹介！

「真空ポンプの音がうるさい！」
「騒音の原因がわからない」

などと、真空ポンプの騒音問題に悩む方も多いのではないでしょうか。実は、騒音にはいくつかの原因があり、対策を講じることで改善できるケースが多くあります。しかし、初めて扱う方にとっては原因の特定や対処方法が難しいものです。

本記事では、真空ポンプの騒音原因や対策方法、注意点などについて解説します。加えて、静音性に優れたドライ真空ポンプについても紹介しています。ぜひ最後までチェックしてみて下さい。

真空ポンプの騒音はどこから？発生する主な原因5選

真空ポンプから発生する騒音には、さまざまな原因があります。騒音の種類によって、対策方法も異なるため、まずは何が原因で音が発生しているのかを正しく理解することが大切です。

ここでは、真空ポンプの使用現場でよく見られる騒音の原因を5つご紹介します。

• モーターや回転体の機械的振動音
• 排気時の空気振動によるノイズ
• 共振・振動伝播による周囲装置との干渉音
• 設置環境による音の拡散
• オイル式ポンプ特有の潤滑音・ミスト音

以下で詳しく解説します。

モーターや回転体の機械的振動音

真空ポンプの内部には、モーターやローター、ベーンなどの回転部が含まれており、これらの部品が動作することで振動が発生します。軸受けの摩耗やバランスの崩れがあると、振動が増幅されて金属的な唸り音やガタついた音として外部に伝わります。

特に長時間使用したポンプでは、ベアリングの劣化が主な原因となることが多く、異常音の兆候になります。これらの騒音は放置しておくと機器の寿命にも影響するため、定期的な点検や整備によって早期に異常を見つけることが重要です。

排気時の空気振動によるノイズ

真空ポンプが排気を行う際には、圧縮された空気が急激に外部へ放出されることで「シュッ」や「ゴーッ」といったエアノイズが発生します。これは気体の流速や圧力差による空気振動が原因であり、排気弁や排気口の構造にも左右されます。特に高圧縮状態からの解放では、音が大きくなりやすく、室内に響く場合があります。

排気サイレンサーの設置や配管ルートの見直しによって、この種の騒音は軽減可能です。空気の流れによる音は機械的な異常ではありませんが、作業環境の快適性に影響するため対処が求められます。

共振・振動伝播による周囲装置との干渉音

真空ポンプ本体が発生する振動は、床や設置台、接続された配管を通じて周囲の設備へと伝播します。これにより、他の装置や建材と共振を起こし、「ビリビリ」「ガタガタ」といった干渉音が生じることがあります。共振はポンプ自体に問題がなくても、取り付け条件や設置環境によって発生するため、見落とされやすいポイントです。

防振ゴムやアイソレーターの使用、架台の強化などが効果的な対策となります。構造的な共鳴が発生している場合には、根本的なレイアウト変更が必要になることもあるので注意が必要です。

設置環境による音の拡散

ポンプが狭い場所や硬い壁に囲まれた空間に設置されている場合、音が反響しやすくなり、実際以上に騒音が大きく感じられることがあります。これは『音源』そのものの音量ではなく、音波が壁や天井で跳ね返ることによって発生する拡散音です。

特にコンクリートや金属素材の多い環境では反射が強く、耳障りな高音域の響きが強調されます。対策としては、吸音パネルの設置や防音ボックスの活用、設置場所の見直しが有効です。空間全体での音響制御が、静音化のポイントです。

オイル式ポンプ特有の潤滑音・ミスト音

オイル式真空ポンプでは、潤滑油が内部を循環する際に発生する「コポコポ」や「チリチリ」といった液体音や、排気時にミストが混じることによる細かな噴射音が発生することがあります。これらはドライポンプには見られない特有の現象であり、特に静かな環境では目立ちやすくなります。

オイルの粘度や温度によって音の質が変化することもあり、季節によって騒音の感じ方が異なる場合もあります。これらの音が気になる場合は、オイル管理を徹底するか、ドライポンプへの切り替えを検討することが効果的です。

真空ポンプの騒音を防ぐ！騒音対策3選

真空ポンプの騒音を完全にゼロにするのは難しいものの、対策を講じることで大幅に軽減することは可能です。騒音の原因に合わせて適切な対応を行えば、作業環境の改善やストレスの軽減につながります。

ここでは、真空ポンプの騒音対策をご紹介します。

• 防音ボックスや吸音材で物理的に遮音する
• 設置面や配管の共振を防ぐ
• ドライ真空ポンプに入れ替えて静音化を図る

以下で詳しく解説します。

防音ボックスや吸音材で物理的に遮音する

真空ポンプの音を低減する手段としてもっとも一般的なのが、防音ボックスや吸音パネルを用いた物理的な遮音です。防音ボックスは機器全体を覆うように設置することで、内部で発生した音が外部へ漏れるのを大幅に防ぐことが可能です。

吸音材は、金属音や空気振動音の反射を抑える効果があり、周囲に広がる音圧を軽減できます。特に、狭い空間や壁際に設置されたポンプには効果的です。設置にあたっては、放熱や点検のしやすさにも配慮しながら、適切な素材と構造を選ぶことがポイントです。

設置面や配管の共振を防ぐ

真空ポンプから発生する振動は、設置面や接続された配管を通じて他の構造物へと伝わり、騒音や共振の原因になります。このような振動音を抑えるには、設置面に防振ゴムや防振マウントを使用し、振動を吸収・分散させるのが効果的です。

また、配管部分にも防振継手を導入することで、音の伝播を防げます。固定方法にも注意が必要で、配管が硬く固定されすぎていると振動がそのまま伝わってしまいます。設置環境を見直すだけで、騒音の発生を抑えられる場合も少なくありません。

ドライ真空ポンプに入れ替えて静音化を図る

ドライ真空ポンプは、構造上オイルを使用しないため、潤滑音やオイルミストの発生音がなく、オイル式に比べて格段に静音性が高いのが特徴です。また、内部の構造がシンプルで可動部品が少ないため、運転時の振動や機械的な音も小さく抑えられています。加えて、冷却が空冷式中心で、水流による騒音も発生しにくい設計です。

すでに複数の現場で、オイル式ポンプからドライ式に切り替えることで作業環境が大きく改善されたという事例もあります。静かな環境を求めるなら、有効な選択肢といえるでしょう。

ドライ真空ポンプなら騒音を防いで安定した可動ができる！

ドライ真空ポンプは、潤滑油を使用しない構造のため、オイル由来の潤滑音やミスト音が発生せず、運転時の騒音が非常に少ないことが特徴です。また、構造がシンプルで可動部品が少ないことから、振動や機械的な異音も発生しにくく、安定した動作を維持しやすいメリットがあります。

さらに、空冷式を採用するモデルが多く、水流によるノイズも避けられるため、作業環境の静音化に効果的です。騒音対策と安定稼働の両立を目指すなら、有力な選択肢といえるでしょう。

ドライ真空ポンプを導入する主なメリット

ここでは、ドライ真空ポンプを導入することで得られる代表的なメリットをご紹介します。

• 潤滑油が不要でクリーンな排気が得られる
• オイル管理・交換が不要でメンテナンスが簡単
• ランニングコストを抑えられる
• 静音性が高く、作業環境が快適になる

では、それぞれのメリットについて具体的に見ていきましょう。

潤滑油が不要でクリーンな排気が得られる

ドライ真空ポンプは潤滑油を使用しない構造のため、排気中にオイルミストや揮発成分が混入することがありません。この特性により、クリーンルームや医療分野、半導体製造のような高い清浄度が求められる現場に適しています。

また、油分による排気経路の汚染や製品への影響も防げるため、品質管理の面でも安心です。さらに、排気配管や装置内部の洗浄頻度も抑えられることから、メンテナンス面でも利便性があります。クリーンな環境を維持する必要がある作業には非常に有効な選択肢です。

オイル管理・交換が不要でメンテナンスが簡単

ドライ真空ポンプは潤滑油を使わないため、オイル量の管理や定期的な交換作業が不要です。これにより、点検項目が少なくなり、設備担当者の保守負担を大きく軽減できます。

従来のオイル式ポンプでは、オイルの劣化チェックやフィルターの交換などが必要でしたが、ドライ式ではそのような対応は基本的に発生しません。装置を停止しての整備回数も減るため、稼働率の向上にもつながります。メンテナンスにかかる時間や手間を抑えたい現場にとって、大きなメリットです。

ランニングコストを抑えられる

ドライ真空ポンプは、オイルやフィルターといった消耗品が不要なため、継続的な運用にかかる費用を大幅に削減できます。また、オイル関連の管理作業が不要になることで、点検・整備にかかる人件費も抑えることが可能です。

導入コストはやや高めに感じられるかもしれませんが、長期的に見ればメンテナンスの回数とコストが減るため、結果としてコストパフォーマンスに優れた選択肢になります。特に、安定稼働を前提とする24時間運転の現場では、経済性の面で高い効果が期待できるでしょう。

静音性が高く、作業環境が快適になる

ドライ真空ポンプは、構造的に振動が少なく、潤滑油の流動音やミスト噴出音がないため、非常に静かな運転が可能です。特にオフィスに隣接する研究施設やクリーンルームなど、静音性が求められる環境では大きな効果を発揮します。

音の原因となる要素が少ないため、稼働中のストレス軽減にもつながり、作業者の集中力や作業効率にも良い影響を与えます。静音対策にかかる追加の設備投資を抑えられる点でも、導入のメリットは非常に大きいといえるでしょう。

ドライ真空ポンプを導入する際の注意点

ドライ真空ポンプには多くのメリットがありますが、導入すればすべての問題が解決するというわけではありません。使用環境や目的に応じて適切に選定・運用しなければ、期待した性能を発揮できない場合もあります。ここでは導入時に押さえておきたい3つの注意点をご紹介します。

• 使用条件に合った機種を選定すること
• オイルレスでもメンテナンスは必要
• 信頼できるメーカーを選ぶ

これらの点を事前に確認し、失敗のない導入を目指しましょう。以下で詳しく解説します。

使用条件に合った機種を選定すること

ドライ真空ポンプは用途によってさまざまなタイプが存在し、対応できる真空度、排気速度、ガス成分の種類などが異なります。そのため、導入にあたっては、自社の使用条件に合った機種を選定することが重要です。たとえば、高温のガスや腐食性のあるガスを排気する場合は、耐熱性・耐腐食性に優れたモデルが必要です。

また、排気量が足りない機種を選ぶと、処理速度や真空度に悪影響が出ることもあります。仕様書の確認やメーカーとの事前相談を通じて、条件に合う製品を選ぶことが導入成功のカギとなります。

オイルレスでもメンテナンスは必要

ドライ真空ポンプはオイルを使用しないため、潤滑油の交換やオイルミストの処理は不要ですが、完全にメンテナンスフリーというわけではありません。内部にはベーンやシールなどの消耗部品が存在し、これらは使用時間の経過とともに摩耗・劣化していきます。

また、吸気口のフィルターや排気ラインに異物がたまると、性能低下や故障の原因になります。機種によって推奨されるメンテナンス周期は異なりますが、定期点検と記録を行うことでトラブルを未然に防ぎ、長期的な安定稼働につながるでしょう。

信頼できるメーカーを選ぶ

ドライ真空ポンプは長期にわたって使用する装置であるため、製品の品質だけでなく、導入後のサポート体制が重要になります。万が一のトラブル発生時に迅速な対応ができるメーカーであれば、稼働停止のリスクを最小限に抑えることが可能です。

特に、消耗部品の供給スピードや技術サポートの質、保守契約の有無などは、運用コストや安心感に直結します。導入実績が豊富で、各業界の要望に応じた提案力のあるメーカーを選定することで、設備全体の信頼性と効率を高めることができるでしょう。

信頼できるドライ真空ポンプメーカーの選び方

ドライ真空ポンプは長期間にわたって使用する設備であるため、性能だけでなく、メーカーの対応力や信頼性も選定の大きなポイントになります。誤った選定は、トラブル時の対応遅れや部品供給の遅延などにつながる恐れがあるので注意が必要です。

ここでは、信頼できるメーカーを選ぶために押さえるべきポイントを3つに整理しました。

• 導入実績が豊富で、使用業界に強みがあるか確認する
• 保守体制・アフターサポートが整っているか確認する
• 相談時の対応や提案力で信頼できるか見極める

以下で詳しく解説します。

導入実績が豊富で、使用業界に強みがあるか確認する

メーカーを選定する際には、その企業がどの業界にどれほどの導入実績を持っているかを確認することが大切です。真空ポンプの使用環境は医療、半導体、食品、産業機械など多岐にわたり、それぞれに求められる性能や運用要件が異なります。自社の業種に特化した経験を持つメーカーであれば、実績に基づいた最適な機種提案やカスタマイズ対応が期待できます。

また、実績が豊富であれば製品の信頼性も高く、導入後の不安を減らす要因です。導入事例や採用実績の確認は、メーカー選びの重要な判断材料です。

保守体制・アフターサポートが整っているか確認する

ドライ真空ポンプは、長期運用を前提とした設備のため、導入後の保守体制やアフターサポートが極めて重要です。万が一の故障時に迅速な対応が可能か、部品の供給体制が整っているか、技術スタッフによる現地対応が可能かなどは、日常の運用に直結します。

保守契約の有無や、定期点検・メンテナンスのスケジュール提案などがしっかりと提供されるメーカーであれば、安心して長期間使い続けることができます。販売後も継続的なサポートが受けられるかを事前に確認することが大切です。

相談時の対応や提案力で信頼できるか見極める

メーカーとの最初の接点となるのが、導入前の相談や問い合わせです。この段階での対応の丁寧さや、提案内容の的確さは、その企業が信頼できるかどうかを判断する重要な材料となります。

ヒアリング内容が浅かったり、一方的な提案しかない場合は、自社の運用条件に合った製品選定や導入支援が十分に受けられない可能性があります。一方、使用環境や目的に基づいた最適な機種や設置方法を提案できるメーカーであれば、導入後の運用もスムーズに進められるでしょう。

おすすめドライ真空ポンプメーカー3選

ここでは、実績と品質で評価されている、おすすめドライ真空ポンプメーカーを3社ご紹介します。

• 神港精機株式会社
• 株式会社アルバック
• 樫山工業株式会社

以下で詳しく解説します。

神港精機株式会社

神港精機株式会社は、真空技術に関する豊富な経験と専門性を持つ兵庫県神戸市の製造企業です。

注目の製品であるスクリュー式ドライ真空ポンプ『SST/SSXシリーズ』は、低消費電力・クリーン排気・高い耐久性を兼ね備えており、産業分野で高い評価を得ています。また、直結型油回転真空ポンプや水封式ポンプなど、さまざまな構造の製品をラインナップし、ユーザーのニーズに応じた選択肢を提供していることも強みのひとつです。

さらに、製品は大阪・関西万博の展示にも採用され、公共プロジェクトにおいても信頼を得ています。機能性と信頼性を両立した製品を探している方には、神港精機の真空ポンプはおすすめの選択肢です。

株式会社アルバック

株式会社アルバックは、真空技術を中心に多様な産業向け製品を展開しているグローバル企業です。

真空ポンプの分野では、低・中・高真空の各領域に対応したドライタイプを含む製品群を提供しており、『ULVAC SHOWCASE』では関連機器と併せて確認できます。ラインナップには、真空計やガス分析計、真空バルブなども含まれ、システム全体の構築に必要な製品を一貫して取り揃えている点が強みです。

研究開発から量産設備まで幅広く対応可能な体制が整っており、設備導入時の相談先としても心強い存在です。複合的な真空ソリューションを必要とする現場には、アルバックが有力なパートナーとなるでしょう。

樫山工業株式会社

樫山工業株式会社は、長野県に本社を構える真空ポンプの開発・製造に特化した企業です。

製品群には『NeoDryシリーズ』『MUシリーズ』などがあり、オイルを使わない構造で高性能・低振動・静音性を実現しています。こうした特徴により、半導体製造やFPD分野など、高い清浄度が求められる環境に数多く導入されています。

また、環境配慮型の設計にも注力しており、持続可能な開発目標を視野に入れた製品開発が進められています。索道設備や雪上機器なども手がけており、技術力の応用範囲が広いことも特徴です。安定稼働と省メンテナンス性を重視したい現場では、樫山工業の真空ポンプがおすすめです。

まとめ

本記事では、真空ポンプの騒音の主な原因やその対策方法、静音性に優れたドライ真空ポンプの特徴、さらに導入時の注意点と信頼できるメーカーの選び方までを解説しました。

真空ポンプの騒音は、機械的な振動音や排気音、設置環境の反響など、複数の要因が複雑に関係していますが、適切な対策を講じることで大幅に軽減できます。特にドライ真空ポンプは、静音性や保守性に優れており、作業環境の改善に大きく貢献します。

導入にあたっては、機種選定やメーカー選びを慎重に行い、自社の用途に最適な一台を選ぶことが重要です。快適で安定した設備運用を実現するために、本記事を参考に対策を進めてみてください。