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真空ポンプの圧力範囲とは?用途に合う真空ポンプの圧力範囲と選び方も解説

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真空ポンプの圧力範囲に関する画像

「そもそも真空ポンプの圧力範囲ってなに?」

「真空ポンプの圧力範囲ってどのくらい?」

「どの圧力範囲が自社の用途に合っているのか分からない」

などと悩む方も多いのではないでしょうか。真空技術には専門的な用語や段階が多く、初めて扱う方には判断が難しいことが多いです。

そこで本記事では、真空ポンプの圧力範囲に関する基礎知識や圧力の単位、各圧力帯に適したポンプの種類、おすすめのドライ真空ポンプ導入のメリットについて解説します。最適な機種選定と導入の失敗を防ぎたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

さらに、ドライポンプを取り扱うメーカーもご紹介しますので、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。

目次

真空ポンプの圧力範囲とは?

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真空ポンプの圧力範囲とは、ポンプが空気を排気できる圧力の上下限のことを指します。大気圧(約1013hPa)からどれだけ低い圧力まで引けるかが性能の指標となり、用途に応じて求められる圧力も異なります。

圧力範囲は、ポンプの種類や構造によって決まり、『粗真空』『中真空』『高真空』『超高真空』などの段階に分類されます。適切な真空ポンプを選定するには、自社の工程や設備で必要な圧力レベルを把握することが重要です。性能を最大限に引き出すためには、使用環境との整合性が求められます。

真空ポンプの『圧力の単位』と『真空の段階』

真空ポンプの『圧力の単位』と『真空の段階』に関する画像

圧力の単位には複数の表記があり、真空の深さを段階ごとに理解するには単位と区分の対応関係を整理すると分かりやすいです。以下の表に、主な圧力単位と真空段階の目安をまとめました。

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真空の段階圧力の目安(Pa)圧力の目安(Torr)主な用途例
粗真空10⁵ ~ 10² Pa760 ~ 1 Torr包装機、脱気装置など
中真空10² ~ 10⁻¹ Pa1 ~ 10⁻³ Torr加工装置、一般的な産業用途
高真空10⁻¹ ~ 10⁻⁵ Pa10⁻³ ~ 10⁻⁷ Torr半導体製造、薄膜装置など
超高真空10⁻⁵ Pa 未満10⁻⁷ Torr 未満表面分析装置、電子顕微鏡など

Pa(パスカル)は国際的なSI単位であり、日本国内でも標準的に使用されますが、Torr(トル)も一部業界では根強く使われているため換算理解も必要です。

真空ポンプの圧力範囲の目安

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「どの真空ポンプが、どの圧力帯に対応しているのか」は、選定時にもっとも気になるポイントです。以下の表に、各圧力帯ごとに対応する代表的な真空ポンプの種類をまとめました。

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圧力帯圧力の目安(Pa)適したポンプの種類
粗真空10⁵ ~ 10² Paドライ真空ポンプ、ロータリーポンプ
中真空10² ~ 10⁻¹ Paドライ真空ポンプ(高性能タイプ)、ルーツポンプ
高真空10⁻¹ ~ 10⁻⁵ Paターボ分子ポンプ、拡散ポンプ
超高真空10⁻⁵ Pa 未満クライオポンプ、イオンポンプ

このように、目的とする真空度に応じて選ぶべきポンプの種類が大きく異なります。単に『高性能なポンプ』ではなく、自社の用途に合った真空帯をカバーできる機種を選ぶことが重要です。

各圧力帯に適した真空ポンプの種類は?

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真空ポンプは、それぞれの圧力帯に適した構造と性能を持っており、目的や用途に応じて使い分ける必要があります。間違った機種選定をすると、真空度が十分に確保できなかったり、過剰な性能によりコストが無駄になることもあるので注意が必要です。

ここでは、各圧力帯に適した真空ポンプの種類についてご紹介します。

では、各圧力帯ごとの適合ポンプについて詳しく見ていきましょう。

粗真空:ドライ真空ポンプ・ロータリーポンプが中心

粗真空(約10⁵〜10²Pa)は、一般産業や真空包装、脱気処理、リークテストなど、幅広い分野で利用される圧力帯です。この範囲で活躍するのが、ドライ真空ポンプやロータリーポンプです。ロータリーポンプは安定した吸引力とコストパフォーマンスに優れており、長年にわたり多くの現場で使われています。

一方、オイルを使用しないドライ真空ポンプは、排気がクリーンで環境負荷も少なく、食品・医薬品業界などでも重宝されています。粗真空領域では、効率性と清浄性のバランスを考慮したポンプ選定がポイントです。

中真空:ドライ真空ポンプ・ルーツポンプが多く使われる

中真空(10²〜10⁻¹Pa)の領域では、ドライ真空ポンプに加え、ルーツポンプの併用が一般的です。ルーツポンプは単体では大気圧からの立ち上げができないため、前段にドライポンプなどを組み合わせて使用します。これにより、迅速な排気と高い真空度を確保することが可能です。

中真空は分析装置や熱処理装置、薄膜形成など精度を要する工程で多用され、安定した真空環境を維持するためには、ポンプの性能だけでなく連携性も重視されます。この圧力帯では、排気速度や耐久性に優れた機種選定が求められるでしょう。

高真空・超高真空:ターボ分子ポンプやクライオポンプなど

高真空(10⁻¹〜10⁻⁵Pa)や超高真空(10⁻⁵Pa以下)を必要とする用途では、ターボ分子ポンプやクライオポンプ、イオンポンプなどの高度な装置が使用されます。ターボ分子ポンプは、高速で回転する羽根により分子をはじき出す仕組みで、高真空の到達に優れています。

さらに低圧を必要とする超高真空領域では、冷却原理を用いたクライオポンプやイオン化による捕集方式のポンプが使用されます。これらは半導体製造、電子顕微鏡、表面分析などで不可欠な装置です。精密な環境が求められるため、選定と設置には高度な技術と知識が必要です。

『ドライ真空ポンプ』は汎用性が高く高性能!

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ドライ真空ポンプは、潤滑油を使用しない構造により、クリーンな排気が可能で、幅広い用途に対応できる汎用性の高さが特長です。食品、医療、半導体などの分野はもちろん、産業機械や分析装置にも幅広く導入されています。

さらに、対応できる圧力範囲が広く、粗真空から中真空領域まで安定した性能を発揮します。メンテナンスの手間が少なく、静音性にも優れているため、安定稼働と作業環境の快適性を両立できる高性能な選択肢です。

ドライ真空ポンプを導入するメリット

ドライ真空ポンプを導入するメリットに関する画像

ドライ真空ポンプは、オイル式に比べて多くの面で利便性とパフォーマンスに優れています。導入時の費用こそやや高めですが、運用面で得られる効果は非常に大きく、長期的に見るとコスト効率にも優れています。ここでは、ドライ真空ポンプを導入することによる主なメリットを4つに分けて解説します。

それぞれのメリットを把握し、導入効果を明確にしていきましょう。以下で詳しく解説します。

オイル不要で排気がクリーンになる

ドライ真空ポンプの大きな特長は、潤滑油を使用しない点にあります。オイル式ポンプでは排気中にオイルミストが混ざることがありますが、ドライ式ではこれが発生しないため、クリーンな排気が得られます。この特性により、医療機器、食品加工、精密部品製造など、清浄度が重要視される現場でも安心して使用することが可能です。

また、排気ラインや作業空間の汚染リスクも低減できるため、設備の衛生管理や品質保持にも貢献します。オイル交換の手間がなくなる点でも、導入のメリットは大きいといえるでしょう。

メンテナンスの手間とコストを大幅に削減できる

ドライ真空ポンプはオイル交換やフィルター管理が不要であり、定期的なメンテナンス作業の手間を大幅に軽減できます。潤滑油や関連部品の消耗がないことで交換頻度が減り、メンテナンス作業にかかる時間・人件費・部品代の削減が可能です。

さらに、オイル漏れや劣化によるトラブルリスクも低く、長期間の安定運転が見込めます。保守計画を簡素化できるため、管理負担を減らしたい製造現場や多拠点運用の施設では特に効果的です。結果として、トータルコストの抑制にもつながるでしょう。

静音性が高く、騒音トラブルを防げる

ドライ真空ポンプは、オイル循環音やミスト排出音がないことに加え、構造上可動部品が少ないため、運転中の騒音が非常に小さいのが特徴です。このため、研究室やクリーンルーム、オフィスと隣接する作業環境など、静音性が求められる場所でも使用しやすく、従業員のストレス軽減や作業効率の向上にもつながります。

静かな作動音により、夜間稼働や無人運転時でも騒音苦情を防ぐ効果があります。環境配慮と働きやすい職場づくりを両立したい場合に有力な選択肢です。

対応圧力範囲が広く、多用途に使いやすい

ドライ真空ポンプは、粗真空から中真空まで幅広い圧力帯に対応できるモデルが多く、さまざまな用途に柔軟に対応できるのが強みです。たとえば、脱気工程やパッケージングから、成膜や分析装置まで、1台で複数のプロセスをカバーすることも可能です。ポンプの切り替えや複数台設置の必要が減ることで、設備構成の簡素化や省スペース化にも貢献します。

また、運用変更にも柔軟に対応しやすく、新たな用途への展開もしやすくなります。設備投資の効率化を図るうえで、非常にメリットの大きい仕様です。

ドライ真空ポンプを導入する際の注意点

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ドライ真空ポンプには多くのメリットがありますが、導入時にいくつかの注意点を押さえておかないと、期待する性能が得られなかったり、思わぬコストが発生することもあります。より効果的かつ効率的な導入を実現するために、事前に確認しておくべき3つの重要ポイントをご紹介します。

これらを踏まえることで、導入後のトラブルや無駄を未然に防ぐことができます。以下で詳しく解説します。

用途や圧力帯に合った機種を正しく選ぶ

ドライ真空ポンプは、粗真空から中真空まで幅広い圧力範囲に対応するモデルがありますが、全ての用途に適しているわけではありません。たとえば、ガスの種類、排気量、必要な到達圧力などに応じて適合する機種は異なります。

目的と異なる機種を導入してしまうと、真空性能が不足したり、効率の悪化や故障の原因になることがあります。導入時には、仕様書の確認やメーカーとの詳細な打ち合わせを通じて、実際の使用条件に合致したモデルを選定することが不可欠です。

手間は少ないが、メンテナンスはゼロではない

ドライ真空ポンプはオイル交換が不要なため、メンテナンスの手間が少ないことが特長ですが、完全にメンテナンスフリーではありません。内部のベーン、シール、フィルターなどの消耗部品は使用時間に応じて劣化し、定期的な交換や点検が必要になります。

また、吸排気経路に異物や粉塵がたまると性能が低下することがあるため、日常的な目視点検や清掃も推奨されます。長期的な安定運転を維持するには、機種ごとの推奨メンテナンススケジュールに従った対応が重要です。

実績のあるメーカーを選ぶ

ドライ真空ポンプは長期間にわたって使用する設備のため、導入時にはメーカーの信頼性も重視すべき要素です。製品の品質はもちろん、納入実績やサポート体制が整っているメーカーを選ぶことで、導入後のトラブルにも迅速に対応してもらえる安心感があります。

また、技術提案力や導入前のヒアリング対応も、機種選定の精度に大きく影響します。アフターサービスが手厚く、保守部品の供給体制がしっかりしているかどうかも、選定の際に確認しておくべきポイントです。

失敗しないために!信頼できるメーカーの選び方

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真空ポンプの導入で後悔しないためには、機種選定だけでなく『どのメーカーと取引するか』も非常に重要です。品質や性能だけでなく、導入後の対応力や実績、説明のわかりやすさなど、総合的な信頼性が問われます。ここでは、信頼できるメーカーを選ぶ際に注目すべき3つのポイントをご紹介します。

それぞれの観点から、失敗を避けるための判断基準を詳しく解説していきます。

トラブル時のサポートが整っているか

真空ポンプは長期運用が前提の機器であるため、万が一のトラブルにどう対応できるかは非常に重要な判断材料です。信頼できるメーカーは、故障時の対応スピードやサポート体制が明確で、技術者による訪問対応や代替機の提供なども柔軟に対応してくれます。

また、電話やメールでの問い合わせへのレスポンスも早く、安心して長期的に付き合える体制が整っているかどうかを確認することがポイントです。販売だけでなく『運用までサポートできるか』が信頼の指標になります。

導入実績が豊富かを確認する

導入実績が豊富なメーカーは、それだけ多様な業種・用途に対応してきた経験があるという証です。豊富な実績を持つ企業は、設備構成や真空要件に合わせた具体的な提案が可能で、実運用でのノウハウが蓄積されています。

特に自社と同じ業界での導入事例があれば、安心感も高まります。公式サイトやカタログなどで、導入事例や対応分野を明示しているかどうかも確認材料になります。数字や具体例を提示しているメーカーは、それだけ信頼性が高いといえるでしょう。

丁寧な説明や選定資料があるか

初めて真空ポンプを導入する場合や、設備更新を検討している際には、製品の仕様や適合条件を正しく理解できるかが非常に大切です。信頼できるメーカーは、単なる製品紹介ではなく、導入前のヒアリングや選定の根拠を丁寧に説明してくれる傾向があります。

また、選定資料や仕様書、比較表などが充実していると、社内の稟議や承認プロセスもスムーズに進められます。技術的な知識がない担当者でも納得して導入判断できるようなサポート体制があるかを確認しましょう。

おすすめドライ真空ポンプメーカー3選

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ドライ真空ポンプは、オイルを使わない構造により、クリーンで安定した運用が可能なことから、半導体・精密機器・医療分野など幅広い業界で導入が進んでいます。国内には高品質な製品を供給するメーカーが複数あり、それぞれに特徴ある製品開発が行われています。

次に紹介する3社は、製品の性能だけでなく信頼性や導入実績の面でも非常に優れています。

順に見ていきながら、自社に最適なドライ真空ポンプの選定に役立ててください。以下で詳しく解説します。

神港精機株式会社

出典元:神港精機株式会社

神港精機株式会社は、兵庫県神戸市に本社を構える真空装置の総合メーカーです。

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項目詳細
会社名神港精機株式会社
設立昭和24年1月24日
住所神戸市西区高塚台3丁目1番35号
HPhttps://www.shinko-seiki.com/

真空ポンプにおいては、スクリュー式ドライ真空ポンプ『SST/SSXシリーズ』を中心に、油回転式・水封式・メカニカルブースタポンプなど幅広い製品群を展開しています。中でもSST/SSXシリーズは、省エネルギー性に優れた設計と、クリーンな運転環境が特長です。

2025年開催の大阪・関西万博において、展示装置に採用された実績もあり、公共性の高い場面でも信頼されています。また、真空薄膜装置やプラズマ処理装置などの関連設備にも対応可能で、システムとしての構築力も評価されています。安定した品質と対応力を重視する現場には、神港精機の製品がおすすめです。

また、神港精機についてもっと気になる人は実際にお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。

また、以下の記事にて神港精機について書いているので、参考にしてみてください。

株式会社アルバック

出典:株式会社アルバック

株式会社アルバックは、神奈川県茅ヶ崎市に本社を構える、真空技術を中心とした装置・部品の大手メーカーです。

項目詳細
会社名株式会社アルバック
会社住所神奈川県茅ヶ崎市萩園2500番地
創業年数昭和27年
公式サイトhttps://www.ulvac.co.jp/

ドライ真空ポンプに関しては、低・中・高真空いずれの領域にも対応できる製品を揃えており、研究開発から量産ラインまで多岐にわたる用途に対応可能です。公式サイト『ULVAC SHOWCASE』では、真空ポンプに加えて、真空計・プロセスガスモニタ・真空バルブなどの関連製品が紹介されており、必要な構成要素を一括で選定できます。

豊富な製品群と世界的な展開実績から、総合力を求めるユーザーにとって非常に心強い選択肢といえます。システム全体での最適化を視野に入れる方におすすめです。

また、以下の記事ではアルバックの製品や特徴について紹介しているので、参考にしてください。

樫山工業株式会社

出典:樫山工業株式会社

樫山工業株式会社は、長野県佐久市を拠点に、ドライ真空ポンプの開発・製造を専門に行う技術企業です。

項目詳細
会社名樫山工業株式会社
会社住所長野県佐久市根々井1-1
創業年数昭和26年
公式サイトhttps://www.kashiyama.com/

製品ラインナップには『NeoDryシリーズ』や『MUシリーズ』などがあり、いずれもオイルレスで高いクリーン性と静音性を実現しています。半導体製造装置や電子部品の製造工程など、微細な管理が求められる分野での使用に適しており、導入実績が多いことも強みのひとつです。

加えて、事業の一環として索道事業やスノーマシンの開発も行っており、多様な分野での技術展開がなされています。省メンテナンス性と長寿命を両立した製品をお探しの方には、樫山工業がおすすめです。

また、以下の記事では樫山工業の製品や特徴について紹介しているので、参考にしてください。

まとめ

本記事では、真空ポンプの圧力範囲に関する基礎知識や圧力単位、各圧力帯に適したポンプの種類、さらにドライ真空ポンプのメリットと注意点について解説しました。

真空ポンプは圧力帯によって適合機種が異なるため、導入にあたっては用途に合った選定が不可欠です。特にドライ真空ポンプはクリーン性・メンテナンス性に優れており、多くの業界で活躍しています。

一方で、機種の適合性や信頼できるメーカー選びも重要なポイントです。導入の成功には、正確な情報と専門的なサポートが欠かせません。真空ポンプ選定で迷っている方は、本記事で紹介した内容を参考に、最適な機種とパートナー企業を見極めましょう。

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