近年、ドライポンプが従来の油潤滑式ポンプに代わって注目されています。ドライポンプはオイルフリーで、真空の性質を利用するため、油などの異物が混入するのを防ぐからです。
そのようなドライポンプにも複数の型が存在します。例えば、スクリュー型やルーツ型、ダイアフラム型などです。
そこで、今回はルーツ型ドライポンプに絞って解説していきます。今回、ルーツ型ドライポンプに絞った理由は、ほかのドライポンプよりも優れている点があるからです。そのため、ルーツ型ドライポンプがどのような仕組みでできているのか。またルーツ型ドライポンプの特徴や使用用途について解説していきます。
合わせて、ドライポンプメーカーの選び方やおすすめのメーカーも紹介するので、導入に迷っている方は参考にしてみてください。
ルーツ型ドライポンプとは?
ルーツ型ドライポンプは、油を用いずに気体を排出するドライポンプの一種で、ルーツブロワーを利用した構造によって真空環境を実現します。
ルーツ型ドライポンプは、2つのロータが互いに回転することで、気体を吸い込み、圧縮、排気を行う仕組みです。
他のドライポンプ(スクリュー型やスクロール型など)は内部で圧縮を行う構造を持つことが多いのに対し、ルーツ型はほとんど内部圧縮を行わず、気体を容積変化なく移送します。
ルーツ型ポンプは、ロータの回転で気体をポケット状の空間に取り込み、出口側の圧力条件に応じて気体が押し出される仕組みです。内部で大きな体積変化による圧縮はほとんど行わず、ガスはほぼ等圧で移送されます。
また、ロータやケーシング内には油等の封液は使用していませんが、ギヤやベアリングには潤滑のために油を使用しています。しかし、シール構造を工夫し、油がケーシング内に入らないようにしています。
ルーツ型ドライポンプの特徴3選
ルーツ型ドライポンプの特徴は3つ挙げられます。以下の3つがルーツ型ドライポンプの特徴になります。
1.排気速度が速く、気体の逆流を防ぐ
ルーツ型ドライポンプ1つ目の特徴は、排気速度が速く、気体の逆流を防ぐことです。ルーツ型ドライポンプの排気経路は、ロータの回転で生じる圧力差を利用し、気体を効率的に輸送する仕組みになっています。
他の型と比べて、排気速度が非常に高いことから、気体の逆流を防げます。気体の逆流を防ぐことで、高真空度が実現し、製品の品質が向上し、ポンプの寿命が長くなります。
2.水分が蒸留しにくい
2つ目の特徴は、内部で水分が蒸留・再凝縮しにくいことです。スクリュー型やダイヤフラム型と比較して、ルーツ型ドライポンプは内部圧縮による発熱が少ないため、作動中の温度上昇が抑えられます。
ルーツ型ドライポンプは内部での圧縮熱が少ないため、他のポンプに比べてガス中の水分が熱による大きな相変化(蒸発・凝縮)を起こしにくい傾向があります。また、冷却水を使わない設計のモデルも多く、運転条件によっては水分管理が容易になります。
ただし、条件次第で水分挙動は変化するため、「蒸留しない」と断言することはできません。
3.摩擦によるパーティクルの発生が少ない
3つ目の特徴は、摩擦によるパーティクル(微粒子)の発生が比較的少ないことです。ルーツ型ドライポンプは構造がシンプルで、内部摩耗が少ない設計のため、パーティクル生成を最小限に抑えることができます。
とはいえ、完全にパーティクル発生を防ぐことは不可能です。ロータやケーシングの摩耗による金属微粒子、シール材の摩耗による樹脂粉など、微細なパーティクルが発生する可能性はあります。
半導体製造や食品加工など、高い清浄度・衛生度が求められる業界では、こうしたパーティクルが製品品質に悪影響を及ぼさないよう、可能な限り発生を抑える必要があります。
ルーツ型ドライポンプの用途3選
ルーツ型ドライポンプの用途は主に3つ存在します。次の3つの用途となぜその用途が適しているのかを解説していきます。
①半導体製造業
最初に紹介するルーツ型ドライポンプの用途は、半導体製造業です。こちらでは主に、半導体製造の工程において使用します。
ルーツ型ドライポンプは化学反応ガスやプラズマによって酸化した有機物を排出することに使います。ルーツ型ドライポンプが半導体製造業に適しているのは2つの理由が挙げられます。
1つ目は、排気速度が速いからです。ルーツ型ドライポンプは、短時間で大量のガスを排出できるため、工程の効率化になります。
2つ目は、パーティクルの発生が少ないからです。半導体製造の工程では、多くの微粒子が発生します。ルーツ型ドライポンプは、パーティクル発生が少なく、クリーンな真空環境を維持しやすいため適しています。
これらの理由から、ルーツ型ドライポンプは半導体製造業に適しています。
②宇宙開発業
2つ目に紹介するのは、宇宙開発業です。宇宙開発分野では、主に地上での試験設備や真空チャンバーにおいてルーツ型ドライポンプが利用されます。
人工衛星やロケットエンジンの性能評価・開発段階において、真空環境を模擬するためにポンプを用いてチャンバー内を排気し、ガスを効率的に除去します。これにより、試験環境を安定的に制御し、迅速なガス排気が可能となります。
また、オイルフリー構造であるため、試験対象への汚染リスクを低減できます。
これらの理由から、宇宙開発事業において、排気速度の速いルーツ型ドライポンプは重宝されています。
③フラットパネルディスプレイ製造業
3つ目に紹介するのは、フラットパネルディスプレイ製造業です。こちらでは主に、フラットパネルディスプレイの製造工程に使用されます。
ルーツ型ドライポンプは基板の洗浄で、ガラス基板表面の細かい有機物や無機物を除去し、化学反応で発生したガスを排出します。
ルーツ型ドライポンプがフラットパネルディスプレイ製造業に適しているのは次の理由が2つ挙げられます。
1つ目は、排気速度が速いからです。ルーツ型ドライポンプは、短時間で大量のガスを排出できるため、製造の効率化になります。
2つ目は、パーティクルの発生が少ないからです。フラットパネルディスプレイ製造の工程では、多くの微粒子が発生します。ルーツ型ドライポンプはパーティクル発生が少なく、クリーンな真空環境を維持しやすいため適しています。
つまり、フラットパネルディスプレイ製造業にルーツ型ドライポンプは、適しています。
ドライポンプメーカーの選ぶときのポイント3選
ルーツ型ドライ真空ポンプについて、その特徴や長所をご紹介してきましたが、導入の検討においては信頼できるメーカーの選定が欠かせません。
なぜなら、ローターの加工精度やタイミングギアの品質は、各メーカーの技術力によって大きな差があり、これが排気性能や運転の安定性を左右するためです。さらに、導入後のメンテナンスサポート体制は、ベアリングやシール部品の定期的な点検・交換といった日常管理の効率化に直結します。
そこで、あなたに最適なドライポンプメーカーを選定いただくためのポイントをご説明します。
1.複数のメーカーを比較検討する
各メーカーが提供するカタログやウェブサイトを確認し、それぞれの製品の特長や性能、価格帯を比較することで、自分のニーズに最も合った製品を選べます。
例えば、圧力範囲、排気速度、エネルギー効率、メンテナンスのしやすさ、さらには騒音や熱の発生量といったポイントがメーカーごとに異なるため、用途や設置環境に合うかどうかを慎重に検討しましょう。また、メーカーのサポート体制や保証内容も重要です。
複数の選択肢を比較することで、製品の強みと弱みが明確になり、長期的にコストパフォーマンスの良い選択ができるでしょう。信頼できるメーカーや代理店に相談するのもおすすめです。
2.実績と信頼のある会社か
メーカーや製品の実績と信頼性を確認することは重要です。まず、業界での実績を調べましょう。製品が長期間にわたり広く使用されている場合、それは技術力や製品品質の高さを裏付けるものといえます。
また、アフターサービスが充実しているかどうかも重要なポイントです。万が一故障した場合の対応スピードや、定期的なメンテナンスの提供体制が整っているメーカーを選ぶことで、安心して使用を続けることができます。信頼性の高いメーカーは、トータルでのコストパフォーマンスにも優れているでしょう。
3.価格とメンテナンスが見合っているか
初期費用では、ポンプ本体の価格だけでなく、設置工事や付属装置の導入にかかる費用も含めて検討しましょう。さらに、ランニングコストも見逃せません。
電力消費量や、定期的なメンテナンスに必要な部品交換費用など、長期的なコストを考慮することで、総合的なコストパフォーマンスを判断できます。導入後のトラブル対応や、運用中の技術的な質問に迅速に対応できる体制が整っているかを確認することが大切です。
また、特殊な用途や環境に合わせたカスタム対応が可能なメーカーは、より柔軟にニーズに応えてくれるでしょう。
ドライ真空ポンプなら神港精機株式会社がおすすめ
項目 | 詳細 |
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会社名 | 神港精機株式会社 |
設立年月日 | 1949年1月24日 |
資本金 | 3億7500万円 |
住所 | 神戸市西区高塚台3丁目1番35号 |
HP | https://www.shinko-seiki.com/ |
神港精機は、真空ポンプをはじめとする様々な産業用機器の製造と販売を行っている日本のメーカーです。
例えば、スクリュー型ドライポンプの開発を筆頭に、薄膜形成装置やプラズマ処理装置という製品も開発しています。このような多数の技術開発の背景には、会社が創業してから75年で培った実績と経験の歴史が生かされています。
ドライ真空ポンプにおいて、これまで凝縮性ガスや粉体等を吸引するハードプロセスが極めて困難とされていました。しかし、神港精機では安定した運転を可能にするスクリュー型ドライ真空ポンプ『SST・SSXシリーズ』の開発に成功しています。
同社は、顧客のニーズに応えるだけでなく、常に新しい価値を提供し続ける企業としての信頼を築いてきました。そのため、産業用機器の分野で欠かせない存在となっています。
また、以下の記事にてドライ真空ポンプのおすすめの会社も書いているので、参考にしてみてください。
まとめ
今回はルーツ型ドライポンプについて紹介しました。
ルーツ型ドライポンプは排気速度が速い為、クリーンな真空を実現できます。また、パーティクルの発生を抑え、水分が蒸留しないのは衛生面と安全面から大きな特徴です。
また、ドライポンプメーカーを選ぶときのポイントやおすすめのメーカーも紹介させていただきました。
神港精機は、ドライポンプの開発に長い歴史を持ち、凝固性ガスや粉体というドライポンプが不向きとされていた液体や気体にも対応しています。本記事を参考にしながら、ぜひ貴社の用途に合ったメーカーや製品をお選びいただき、より良い成果の実現にお役立ていただければ幸いです。