株式会社荏原製作所は、創業110年を超える歴史を持つ日本を代表するポンプメーカーです。水処理設備から産業用ポンプ、精密機器まで幅広い製品を展開し、国内外で高い評価を得ています。
特に真空ポンプ分野では、半導体製造装置向けの高性能ドライポンプなど、先端技術を活かした製品開発に力を入れています。本記事では、荏原製作所の歴史と強み、真空ポンプのラインナップについて詳しく紹介します。
さらに、ドライポンプを取り扱うメーカーもご紹介しますので、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
株式会社荏原製作所とは

株式会社荏原製作所は、1912年に創業した日本を代表するポンプメーカーです。
創業以来100年以上にわたり、ポンプ技術を中心に流体機械や環境関連機器、精密・電子機器などの分野で事業を展開しています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社荏原製作所 |
| 設立年月日 | 1920年5月 |
| 住所 | 東京都大田区羽田旭町11-1 |
| HP | https://www.ebara.co.jp/index.html |
国内市場だけでなくグローバル市場でも高いシェアを持ち、産業用ポンプや真空ポンプの分野で世界的な評価を受けている企業です。
特に半導体製造装置や水処理システムの分野では、高い技術力と品質により、多くの顧客から信頼を得ています。社名の「荏原」は、創業者・畠山一清氏の出身地である東京都大田区の地名に由来しています。
現在は東京都大田区に本社を構え、国内外に多数の生産拠点と販売ネットワークを展開するグローバル企業として成長を続けてることが魅力の企業です。
創業の歴史と企業理念
・1912年の創業から現在までの発展
・「水と空気と環境の分野で、優れた技術と最良のサービスを提供する」という企業理念
・グローバル企業としての成長戦略
荏原製作所は1912年、畠山一清氏によって東京都大田区に畠山ポンプ製作所として創業されました。当初は農業用ポンプの製造から始まり、国内の近代化とともに産業用ポンプへと事業を拡大していきました。
第二次世界大戦後の復興期には、水処理分野にも進出し、日本の産業発展と公衆衛生の向上に大きく貢献しています。
同社の企業理念は「水と空気と環境の分野で、優れた技術と最良のサービスを提供する」というものです。この理念のもと、常に技術革新に挑戦し、社会インフラから最先端の産業分野まで幅広いニーズに応える製品開発を続けてきました。
近年はM&Aも活用しながら事業領域を広げ、総合エンジニアリング企業として進化を続けています。
株式会社荏原製作所の強み

荏原製作所は、長年にわたる技術開発と市場開拓によって、ポンプメーカーとしての確固たる地位を築いてきました。
同社の強みは、継続的な設備投資と研究開発、グローバルな視点での産業貢献、そして顧客に寄り添ったサポート体制にあります。これらの強みが、国内外の多くの顧客から高い評価を受けている理由となっています。
設備投資・研究開発に注力
荏原製作所は研究開発に積極的に投資しており、年間の研究開発費は売上高の約3〜4%を占めています。特に先端技術の開発に力を入れており、半導体製造装置向けの真空ポンプや、省エネルギー型の水処理システムなど、高付加価値製品の開発を推進しています。
藤沢事業所内にある技術開発センターでは、流体解析や材料研究、デジタル技術の活用など、多角的なアプローチで技術革新に取り組んでいます。特に計算流体力学(CFD)を活用した製品設計や、AIによる予知保全技術の開発など、最新のデジタル技術の導入にも積極的です。
また、大学や研究機関との産学連携も活発に行っており、基礎研究から応用開発まで幅広い領域で共同研究を進めています。こうした継続的な技術投資が、同社の製品の高い信頼性と性能を支えています。特許取得数も国内外で多く、技術的優位性の維持に努めています。
世界の産業発展を推進
荏原製作所のグローバル展開は、単なる販売網の拡大にとどまらず、各地域の産業発展への貢献を重視しています。特にアジア新興国での水インフラ整備や環境保全プロジェクトに積極的に参画し、現地のニーズに合わせたソリューション提供を行っています。
半導体産業の発展においても重要な役割を果たしており、世界各地の半導体製造拠点に高性能な真空ポンプや冷却システムを供給しています。特に最先端の半導体製造プロセスで求められる超高真空技術や純水製造技術などは、同社の強みとなっています。
また、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献も重視しており、省エネルギー製品の開発や、再生可能エネルギー関連設備の提供など、環境負荷低減に向けた取り組みを推進しています。こうしたグローバルな視点での産業貢献が、国際的な評価につながっています。
カスタマーサポートの充実
荏原製作所は製品販売後のサポート体制にも力を入れており、全国に広がるサービスネットワークで迅速な対応を実現しています。特に24時間365日対応のサービス体制を構築し、産業用設備の停止リスクを最小限に抑える体制を整えています。
予防保全サービスも充実しており、定期点検や消耗品の適切な交換時期の提案など、製品の長寿命化とライフサイクルコストの低減をサポートしています。
近年ではIoT技術を活用したリモートモニタリングシステムも導入し、遠隔地からの状態監視や異常検知を可能にしています。
また、顧客向けの技術研修やセミナーも定期的に開催し、製品の適切な運用方法や最新技術の情報提供を行っています。こうしたきめ細かなカスタマーサポートが、長期的な信頼関係の構築につながり、リピート受注率の高さにも表れています。
株式会社荏原製作所が製造する真空ポンプ

荏原製作所は多様な真空ポンプを製造しており、特にドライ真空ポンプの分野では高い技術力を持っています。
用途や性能要件に応じて選べる幅広いラインナップを揃え、半導体製造から一般産業まで様々な分野のニーズに対応しています。主力製品として、スクリュー型、スクロール型、多段ルーツ型などのドライポンプを展開しています。
スクリュー型ドライポンプ

荏原製作所のスクリュー型ドライポンプは、2本のスクリューローターを精密に噛み合わせて回転させることで気体を圧縮・排気する仕組みです。このタイプは高い排気速度と優れた耐久性を兼ね備え、半導体製造プロセスなど連続運転が求められる用途に最適です。
特長として、広い圧力範囲(大気圧から高真空まで)での安定した排気性能、プロセスガスに対する高い耐性、そして効率的な冷却機構による熱管理能力が挙げられます。
特に最新モデルでは、消費電力を従来比で最大30%削減した省エネ設計となっており、運用コスト低減に貢献します。
さらに、防音設計にも力を入れており、同クラスの競合製品と比較して低騒音での運転が可能です。設置面積も最小限に抑えたコンパクト設計となっているため、クリーンルームなど設置スペースに制約のある環境でも効率的に配置できます。
インバーター制御も標準搭載され、負荷に応じた最適運転が可能となっています。
スクロール型ドライポンプ
スクロール型ドライポンプは、固定側と旋回側の2枚のスクロール(渦巻き状の板)を組み合わせた構造を持ち、旋回運動により内部に形成される空間の容積変化を利用して排気を行います。
荏原製作所のスクロール型ポンプは、特に小型・軽量化と低振動・低騒音性能に優れています。
このタイプは主に分析機器や研究開発用途、小規模な半導体製造装置向けに提供されており、コンパクトながら安定した真空性能を実現しています。特にオイルフリー設計のため、クリーンな真空環境が求められる用途に最適です。
また、シンプルな構造により、メンテナンス性にも優れています。
特筆すべき点として、荏原製作所のスクロール型ポンプは耐久性を高める独自のコーティング技術を採用しています。
これにより、耐食性が向上し、様々なガス環境下でも安定した性能を発揮します。静音設計にもこだわっており、騒音レベルは同クラス最低水準を実現しているため、静かな環境が求められる研究施設などでも快適に使用できます。
多段ルーツ型ドライポンプ
荏原製作所の多段ルーツ型ドライポンプは、複数のルーツ式ポンプを直列に配置した構造で、高真空域での優れた排気性能を特徴としています。特に大容量の真空チャンバーを短時間で排気する必要がある用途に適しており、ディスプレイ製造や太陽電池製造などの分野で活用されています。
このタイプの最大の特長は、高い排気速度と優れた到達真空度を両立している点です。従来型のルーツポンプの弱点であった圧縮比の限界を、多段構造により克服しています。また、荏原製作所独自の流体解析技術を活用した最適設計により、ポンプ内部での温度上昇を抑制し、ガスの凝縮や副生成物の堆積リスクを低減しています。
制御面でも先進的で、インテリジェント制御システムにより複数のステージを最適に制御し、省エネ運転と高性能を両立しています。特に荏原製作所の多段ルーツ型ポンプは、パルス的な負荷変動にも迅速に対応できる応答性の高さが評価されており、バッチ処理が多い製造プロセスで大きな強みとなっています。
真空ポンプを導入する際の注意点

真空ポンプを導入する際には、性能だけでなく設置環境やメンテナンス性、メーカー選定など、複数の視点から確認することが重要です。用途や使用環境に合わないポンプを選んでしまうと、性能を発揮できないだけでなく、運転コストの増加や故障の原因にもつながります。
ここでは、真空ポンプ導入前に必ず確認しておくべき3つの注意点を紹介します。
これらのポイントを押さえることで、安定した稼働と長期的なコスト削減が可能になります。以下で詳しく解説します。
設置スペースと騒音・振動対策を確認する
真空ポンプは、稼働中に振動や騒音を発生する機器です。そのため、導入前に設置スペースの確保と周囲への影響を考慮する必要があります。狭い場所に無理に設置すると、放熱が不十分になり、オーバーヒートや寿命の低下を招く恐れもあるため注意が必要です。
また、振動が周辺機器に悪影響を及ぼすこともあるため、防振マットや防音カバーの設置を検討しましょう。特に、研究施設や食品工場など静粛性が求められる現場では、低騒音モデルを選ぶことも有効です。
適切な設置環境を整えることで、ポンプの性能を最大限に引き出すことができます。
メンテナンス性とランニングコストを把握する
真空ポンプは、長期間の運転を前提とした設備であり、定期的なメンテナンスとランニングコストを把握しておくことが重要です。
例えば、油回転式ポンプでは定期的なオイル交換が必要であり、ドライポンプではフィルターやシール部品の交換が発生します。これらの保守作業にかかるコストや交換部品の入手性を事前に確認しておくと安心です。
また、消費電力や冷却効率によっても運用コストが変わるため、省エネ設計のモデルを選ぶことで長期的なコスト削減につながります。導入費用だけでなく、維持費も含めた総コストで判断することがポイントです。
信頼できるメーカーを選ぶ
真空ポンプの性能を長期的に維持するためには、信頼できるメーカーの製品を選ぶことが欠かせません。
メーカーごとに得意とする用途や技術が異なり、アフターサービスの品質も大きく変わります。購入前に、メーカーの導入実績や保証内容、修理対応のスピードなどを確認しましょう。
また、国内拠点や技術サポート体制が整っているメーカーであれば、トラブル時にも迅速な対応が期待できます。信頼性の高いメーカーを選ぶことで、製品寿命を延ばし、設備稼働率の安定化を図ることができるでしょう。
信頼できる真空ポンプメーカーの選び方

真空ポンプは長期間にわたって使用する機器のため、導入後の運用サポートや信頼性の高さがメーカー選びの重要なポイントです。
ここでは、信頼できる真空ポンプメーカーを選ぶための基準を3つ紹介します。
これらを確認することで、導入後も安心して運用を継続できるメーカーを見極めることができます。以下で詳しく解説します。
導入実績と専門分野の強みを確認する
信頼できる真空ポンプメーカーを選ぶ際は、導入実績の多さと専門分野での強みを確認することが重要です。なぜなら、メーカーごとに得意分野があり、半導体・医薬・分析装置など特定の産業に特化しているからです。
これらの分野で実績を積んでいるメーカーは、環境や用途に応じた最適な提案を行うノウハウを持っています。
また、導入実績の豊富なメーカーは、製品品質が安定しており、長期運用でも高い信頼性を維持できます。自社の使用目的に合った専門性を持つメーカーを選ぶことで、導入後のトラブルを最小限に抑えられるでしょう。
技術サポートと製品知識が豊富なメーカーを選ぶ
真空ポンプは、使用環境やガスの種類によって性能が左右されるため、導入時や運用中に適切な技術サポートを受けられるかどうかが非常に重要です。信頼できるメーカーは、導入前の現場確認や仕様提案、運転後のトラブル対応まで一貫してサポートしてくれます。
さらに、製品知識が豊富な技術スタッフが在籍しているかどうかも確認ポイントです。例えば、耐腐食性やガスバラスト機能の選定など、用途に合ったアドバイスが受けられるメーカーを選ぶことで、長期的に安定した稼働が可能になります。
複数社を比較検討してメーカーを選ぶ
真空ポンプメーカーを選ぶ際には、複数のメーカーを比較して最適な選択を行うことが欠かせません。製品仕様・価格・サポート体制・納期などを比較することで、最もコストパフォーマンスの高いメーカーを見極めることができます。
特に、同等性能の製品でも、メーカーによって保証期間や修理対応スピード、部品供給体制が異なるため注意が必要です。実際にデモ機を試用したり、導入事例を確認したりすることで、自社の運用環境に最も適したメーカーを選ぶことが可能です。
複数社を比較することで、失敗のない導入判断ができます。
おすすめのドライ真空ポンプメーカー3選
ドライ真空ポンプは、メーカーごとに技術特性や用途、ラインナップに違いがあり、導入先の用途に応じた選定が重要です。ここでは、確かな技術力と実績を備えた国内の代表的な3社をご紹介します。
それぞれのメーカーの特長を見て、自社に最適なドライ真空ポンプを選ぶ参考にしてください。以下で詳しく解説します。
神港精機株式会社

神港精機株式会社は、真空ポンプと真空装置の開発・製造・販売を行う老舗メーカーで、神戸市を拠点に全国へ技術提供を行っています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 会社名 | 神港精機株式会社 |
| 設立 | 昭和24年1月24日 |
| 住所 | 神戸市西区高塚台3丁目1番35号 |
| HP | https://www.shinko-seiki.com/ |
主力の「スクリュー式ドライ真空ポンプSST/SSXシリーズ」は、クリーンかつ高い耐久性を持ち、化学・医療・電子分野など幅広い産業で高評価。真空排気ユニットや油回転・水封式ポンプなどもラインナップしており、ユーザーの用途に応じた最適提案が可能です。
また、技術開発力の高さだけでなく、各地に拠点を持つことでサポート体制も万全。製品導入からメンテナンスまで安心して任せられるメーカーです。
また、神港精機についてもっと気になる人は実際にお問い合わせしてみてはいかがでしょうか。
また、以下の記事にて神港精機について書いているので、参考にしてみてください。

株式会社アルバック

株式会社アルバックは、真空技術のリーディングカンパニーとして世界的に知られる企業で、産業機器や半導体製造装置、材料開発までをトータルに手がけています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社アルバック |
| 会社住所 | 神奈川県茅ヶ崎市萩園2500番地 |
| 創業年数 | 昭和27年 |
| 公式サイト | https://www.ulvac.co.jp/ |
ドライ真空ポンプでは、耐久性・静音性・省エネルギー性を兼ね備えたモデルを多数展開し、厳しい生産環境でも安定稼働を実現しています。
真空機器の専門サイト「ULVAC SHOWCASE」では、部品単位まで網羅した情報を公開しており、選定もスムーズ。加えて、研究開発にも注力しており、次世代製品の共同開発など産学連携も多数実施。最新設備と信頼のサポートを求める企業におすすめのメーカーです。
また、以下の記事ではアルバックの製品や特徴について紹介しているので、参考にしてください。
樫山工業株式会社

樫山工業株式会社は、真空ポンプ専業メーカーとして半導体業界をはじめ多くの精密分野で支持されている企業です。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 会社名 | 樫山工業株式会社 |
| 会社住所 | 長野県佐久市根々井1-1 |
| 創業年数 | 昭和26年 |
| 公式サイト | https://www.kashiyama.com/ |
主力の「NeoDryシリーズ」をはじめとするドライ真空ポンプは、メンテナンスが容易で運転コストを抑えられることから、多くの製造現場に導入されています。
特にクリーンルーム対応の静音モデルや小型モデルも揃っており、省スペース化や低振動化を求める企業に好適。加えて、索道事業や雪上設備事業も展開しており、精密機械と大型インフラの両面で高い技術力を発揮しています。
柔軟なカスタマイズ対応と、ユーザー目線のサポートが強みの信頼企業です。
また、以下の記事では樫山工業の製品や特徴について紹介しているので、参考にしてください。
まとめ
株式会社荏原製作所は、1912年の創業以来、ポンプ技術を中核に発展してきた日本を代表する総合エンジニアリング企業です。「水と空気と環境の分野で、優れた技術と最良のサービスを提供する」という企業理念のもと、グローバルな事業展開を進め、世界各地の産業発展に貢献しています。
真空ポンプ分野では、スクリュー型、スクロール型、多段ルーツ型などのドライポンプを主力製品として展開しており、半導体製造や研究開発など様々な分野のニーズに応えています。それぞれのタイプは独自の特性を持ち、用途に応じた最適な選択が可能です。
また、真空ポンプの選定において選択肢として神港精機も紹介しました。神港精機は特にニッチ市場でのカスタマイズ対応力や柔軟なサポート体制に強みを持っており、小型から中型サイズの真空ポンプが充実しています。
本記事で紹介した情報が、真空ポンプ導入を検討されている方々の参考になれば幸いです。


